iPaaS

iPaaSとは?基礎知識から種類、メリット、ツール選定のポイントなど分かりやすく解説

公開日:2023.02.21 更新日:2024.01.19
iPaaSとは

直近では、新型コロナウイルスの影響もあり、在宅ワークの導入が急増し、より業務を効率化するためにビジネスチャットなどのコミュニケーションツールやMAツール、SFA、CRM、会計ソフト、クラウドファイルサーバーなど、さまざまなクラウドアプリケーション(SaaS)を導入する企業が増えました。

しかし、複数のクラウドアプリケーションを導入したことで、管理が煩雑になってしまい、結局効率化につながっていないというケースも多くあります。
また、データ等を一元管理するために新たなクラウドアプリケーションを導入する必要があり、さらにコストがかかってしまったり、手作業でコピー&ペーストをして社内での情報共有を行っていたりと手間が発生してしまっている企業も少なくないでしょう。



iPaaSはクラウドアプリケーションを連携し、一元管理することが可能です。社内でAPI連携をするよりもコストや工数は少なく、ローコードでワークフローを自動化できるというクラウドサービスです。
この記事を読むことで、iPaaSとはどんな機能があるのか、どういったツールがあるのか、知識を深めることができます。

iPaaSとは?

iPaaS(アイパース)とは、Integration Platform as a Serviceの略で、クラウドサービス上でさまざまなソフトウェアアプリケーションやデータをつなぎ合わせるためのプラットフォームのことです。 iPaaSは「統合(Integration)」と「プラットフォーム(Platform)」と「サービス(as a Service)」の3つの概念を組み合わせたもので、企業がデジタルデータを統合し、一元的に管理するのを助ける役割を果たします。 業務効率化を目的として、複数のクラウドアプリケーションを導入し、管理が煩雑になってしまっている企業に役立つサービスです。

iPaaSを使わずにクラウドアプリケーション同士を連携する方法としては、API連携によるデータ連携が可能です。ただし、API連携はプログラミングの知識が必要となり、知見のある方でも連携作業が完了するまでに数カ月を要することもあります。また、外注する場合も、新たに連携する際やクラウドアプリケーション側の大幅なAPIの修正があった場合もその都度外注しなければならないため、予想外のコストがかかってしまうこともあるでしょう。 iPaaSなら、iPaaSツールの提供(開発)元が各クラウドアプリケーションのAPI連携や修正作業を行うため、導入企業側での開発リソースの確保等の心配はありません。 コストを抑えながらAPI連携ができ、企業の業務プロセスの効率化に貢献することができます。


iPaaS導入のメリット

(1)バラバラのシステム同士をまとめられる

iPaaSの最大のメリットは、バラバラになって点在しているクラウドサービス同士をiPaaSによって一つにできることです。異なるクラウドサービス同士をつなぎ合わせることで必要なデータを必要なシステムに同期・統合させることが可能になります。システムごとにデータが孤立していたためデータが活用できなかった、システムからシステムへの転記・データ移行作業に大幅な工数がさかれていたという課題がある場合、iPaaSを利用すれば一気に改善することができます。


(2)ローコード・ノーコード

最近ではプログラミング知識や専門スキルが不要のノーコードでできるiPaaS製品が増えてきています。それにより、今までエンジニアによる開発が必要だったものが、誰でも簡単にシステム間の連携・統合ができるようになりました。ノーコードのiPaaSの場合、連携したいサービスや機能をドラッグ&ドロップで組み立てることができ、視覚的にも分かりやすいGUIになっているため、業務担当者自身がワークフローを作成し実行することで、迅速に対応することが可能です。


(3)コスト削減

iPaaSはクラウド上で提供されるため、企業は自社でサーバーを維持する必要がありません。これにより、ハードウェアの購入やAPI連携の開発工数・コスト、メンテナンスコストを削減できます。また、今まで人が手作業で行っていたデータ移行の時間も削減できるため、全体的なコスト削減を実現できます。


(4)リアルタイムでの連携が可能

iPaaSはデータがリアルタイムで更新されるため、常に最新の情報を利用することができます。これにより、ビジネスにおいての意思決定や、顧客の行動や要望への対応などもリアルタイムに行えるようになります。


(5)パソコンを占有しない

iPaaSはクラウド上で実行されるため、RPAのようにユーザーのパソコンリソースを占有しません。これにより、ユーザーは作業を妨げられずに業務を遂行することが可能です。


(6)自社サーバーに負荷がかからない

データが膨大になるほど統合処理の際に自社サーバーに負担がかかります。iPaaSを導入することにより、運用を自社サーバーからクラウド上に移すことができるため自社サーバーの負担を軽減できます。サーバーの増設やインフラの整備も不要です。また、自社サーバーやインフラの整備が整っていなくてもiPaaSならすぐに導入することが可能です。


iPaaSの種類

iPaaSは「EAI型」「テンプレート(レシピ)型」「ETL(ELT)型」「ESB型」と、大きく4つの種類に分けられます。

EAI型

EAI型は、Enterprise Application Integrationの略で「企業アプリケーション統合」を意味します。複数のシステムを連携させ、データやプロセスの効率的な統合(Integration)を図る仕組みを指します。レコードに対する条件分岐処理、ロジック、細かなマッピングなど高機能な処理が可能です。
リアルタイムでデータを統合し、整合性を保ちたい場合の利用に適しています。
オンプレミスのデータベースなどにも対応し、ライセンス費用としては高額なものが多いのが特徴です。
「Boomi」「DataSpider」「ASTERIA Warp」などのサービスがEAI型にあたります。


テンプレート(レシピ)型

テンプレート(レシピ)型は、データ連携のフローがテンプレート(レシピ)化されているものを指します。ノーコードが前提のため、プログラミング知識や専門スキルが不要で比較的誰でも扱いやすいのが特徴です。iPaaSを初めて導入する企業にも適しています。
クラウドサービスの連携がメインの定型業務の自動化と相性が良く、安価な料金設定となっています。今までは海外製のツールが多かったものの、最近では国産のiPaaSも増加しており、導入しやすいものが多くなっています。
「Zapier」「PowerAutomate」「Anyflow」「JENKA」などのサービスがテンプレート型(レシピ)にあたります。


ETL(ELT)型

ETL(ELT)型は、Extract「データの抽出」、Transform「(分析しやすいように)変換・加工」、Load「格納」の順で処理を行うツールです。
SaaSやオンプレミスのデータベースに合わせた複雑なデータ加工がしやすいのが特徴で、DWH(データウェアハウス)に対して複雑なデータ連携をするのに相性が良いとされています。 例えば企業が保有している大量のデータを加工してBIなどの分析に適した形にしてDWHに書き出したいときなどに適しています。
「trocco」「AWS Glue ETL」「Stitch」「Waha! Transformer」などのサービスがETL型にあたります。


ESB型

ESB型は、Enterprise Serbice Bus(エンタープライズサービスバス)の略で、異なるアプリケーション間のリアルタイムのデータ交換をサポートします。
大規模な組織には、さまざまなデータモデル、プロトコル、およびセキュリティ制限を使用してさまざまな機能を実行する複数のアプリケーションがありますが、ESB はそれらのアプリケーションの統合を容易にします。ただし、アーキテクチャに関する非常に高い専門知識やスキルを要し、且つハイスペックなインフラが必要です。ライセンス費用なども高額になります。
「MuleSoft」「RunMyProcess」などのサービスががESB型にあたります。


iPaaSとIaaS、PaaS、SaaSとの違い

iPaaSを調べていくうえで、似た用語でよく見かけるIaaS、PaaS、SaaSについても解説します。

IaaS

IaaSとはInfrastructure as a Serviceの略で、「イアース」や「アイアース」と呼ばれています。IaaSは、自社でサーバーなどのハードウェアをもたずに、インターネット経由で必要な時に必要なだけサーバーやストレージ、ネットワークリソースを利用することができるサービスです。サーバーレスでインフラが構築できます。
国内で利用されているIaaSは、主に「Amazon Web Services(AWS)」「Microsoft Azure」「Google Cloud」「FUJITSU Cloud Service」「Alibaba Cloud」などが挙げられます。


PaaS

PaaSとは、Platform as a Serviceの略で、「パース」と呼ばれています。PaaSは、ソフトウェア開発環境部分をクラウド化したサービスです。アプリケーション開発などに利用されます。
IaaSと同様に「Amazon Web Services(AWS)」「Microsoft Azure」「Google Cloud」が有名です。

SaaS

SaaSとはSoftware as a Serviceの略で、「サース」または「サーズ」と呼びます。パソコンにソフトウェアをインストールする必要がなく、Webブラウザ上でサービスが利用できる仕組みです。
「Salesforce」「Microsoft 365」「Google Workspace」「Slack」などが挙げられます。


iPaaSとRPAの違い

RPA(Robotic Process Automation)とiPaaS(Integration Platform as a Service)は、業務プロセスやシステム間の連携を効率化するために利用されていますが、目的や対象範囲、機能などに違いがあります。RPAは、PC上のルーティン作業や繰り返し作業を自動化するためのツールで、iPaaSは、異なるクラウドサービス同士を統合するためのプラットフォームです。RPAはデスクトップ上の業務を自動化することができ、レガシーシステムやローカルネットワーク上のシステム・アプリケーション間の連携に最適です。iPaaSはクラウドサービス間の連携・統合において大きく効果を発揮し、例えば、各部門が別々のクラウドサービスを導入しているためデータが孤立してしまい、企業内でデータの連携が取れないという課題解決に有用です。


iPaaS選定のポイント

iPaaSを選定する際には、以下のポイントを押さえることが重要です。

  • 機能の確認
  • セキュリティ対策の確認
  • サポート体制の確認
  • 利用シーンに合わせた選定

機能の確認

ワークフロー機能

業務プロセスの自動化には、ワークフロー機能が必要です。ワークフロー機能は、業務プロセスを自動化するためのフローチャートを作成できる機能です。ワークフロー機能が充実しているiPaaSを選ぶことで、より効率的な業務プロセスの自動化が可能になります。

データの集約・加工機能

iPaaSは、様々なシステムやアプリケーションとの連携を行うために、データを集約する必要があります。そのため、データの集約・加工機能が重要です。集約・加工機能が充実しているiPaaSを選ぶことで、多様なデータを処理できるようになります。

APIのサポート

iPaaSは、様々なシステムやアプリケーションとの連携を行うために、APIをサポートしていることが必要です。APIがサポートされているiPaaSを選ぶことで、簡単かつスムーズなシステム連携が可能になります。

セキュリティ対策

iPaaSは、機密性の高いデータを扱うことが多いため、セキュリティ対策が重要です。適切なセキュリティ対策が施されたiPaaSを選ぶことで、企業の機密情報が漏洩することを防ぐことができます。


サポート体制

iPaaSは、業務プロセスの自動化やシステムの連携に欠かせないツールです。そのため、万が一問題が発生した場合には、迅速に対応できるサポート体制が必要です。サポート体制が充実しているiPaaSを選ぶことで、問題発生時に安心して利用することができます。


セキュリティ対策の確認

iPaaSはクラウド上で提供されるため、セキュリティ対策が重要です。適切な認証や暗号化、データバックアップなど、セキュリティ対策がしっかりとされているか確認しましょう。


サポート体制の確認

iPaaSの利用には、トラブルが発生する可能性があります。そのため、適切なサポート体制が整っているかを確認することも重要です。問い合わせに対する対応の速さや、技術的な問題に対するサポート力など、十分に検討しましょう。


利用シーンに合わせた選定

最後に、自社の利用シーンに合わせてiPaaSを選定することが大切です。例えば、業務プロセスの自動化やシステムの連携など、どのような目的でiPaaSを利用するかによって、必要な機能やセキュリティ対策、サポート体制が異なってきます。また、自社のIT環境に合わせた適切なiPaaSを選ぶことで、システムの連携がスムーズに進むため、業務効率の向上につながります。
以上が、「iPaaS選定のポイント」というタイトルの記事の概要となります。企業がiPaaSを導入する際には、機能やセキュリティ対策、サポート体制、利用シーンなどを考慮して適切なサービスを選ぶことが大切です。本記事を参考にして、自社のニーズに合ったiPaaSを選定しましょう。